小さな森の家/吉村順三
今回は、設計関係者のあこがれ、吉村順三の軽井沢の山荘についてです。「軽井沢の私の家をまとめた1冊の本をつくりたいと、この10年考えていた。それも、建築の専門書ではなく、だれにでもわかりやすい楽しい本を。この家は自然のなかにあって、なにかわくわくする楽しいものをもっているからである。」と、著者で戦後のモダニズム住宅の大家である吉村順三が書いているように、誰が読んでも少し童心に帰ってわくわくする本です。
本を開くと、山荘の大きな写真が並び、まるで設計者に山荘を案内してもらっている感じです。そして、2階の鳥になって森の中に佇むようなリビング。
他にも吉村順三が工夫した楽しい空間やわくわくする仕掛けが解説された後には、山荘の図面や設計の意図が述べられます。
そして、暖炉の工夫やくぐり戸のある大戸、暮らしへの配慮など、さまざまな工夫が楽しく解説されます。戦前に育った著者の伝統文化からのヒントも含んだ知恵が詰まっていて、工業製品の部材を組み合わせた現代の家では実現できない、気持ちのこもった住まいになっています。
最後に、暮らしに合わせた改造と増築など、山荘の歴史も紹介されており、戦後のライフスタイルの変化や、建てた後に何十年も使っていくうちにどういうことが必要になるのかなど、家づくりのヒントが詰まった一冊です。絵本のように簡単に読めるので、ぜひ一度、手にとってみてください。
(建築資料研究社)
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