坪庭のある住まい
昔の町屋には必ずといっていいほど、坪庭がありました。 江戸時代には、都市計画上の配慮もあって家の間口に税金がかけられたので、町屋は間口がせまく奥に長い形になりました。そうすると、通りに面した側以外の三方は隣家と接するので、通風や採光のために坪庭が必要になります。
昔はエアコンがないので、最も不快な夏に気持ちよく暮らせるよう、坪庭には冷気を運んでくれる緑が植えられ、手水鉢などが据えられます。そうしてできた坪庭は、季節感を感じられる気持ちのよい空間になりました。壁で囲まれたプライベートな庭なので、縁側に座って人目を気にせずくつろぐことができます。まちなかでも、自然の感じられる住まい方が上手にできていたんですね。
現代の住まいは、まちなかに建っているものの方が多いのですが、戦後に農村部から都会に出てきた人が家を多く建てたからか、昔の農家型に近い四方に窓があるつくりになっています。田舎のように敷地が広いといいのですが、駐車場を取ったらそれでいっぱいの敷地では、窓の外は隣家か道路で、レースのカーテンを閉め切った暮らしが続くことになります。
現在は8~9割の人が都市に住んでいます。昔の日本の町屋やパリのアパルトマンなど、世界中の都市には都市専用の住まい方があります。そろそろ現代日本でも、昔の町屋のように、坪庭があり都市の中でも開放的で自然を感じられるような暮らし方や家のかたちがあってもいいかもしれませんね。
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