JUNIOR DESIGNER AWARD 2015
東京国際フォーラムのアトリウムを歩いていると、ふと面白そうな展示が目に飛び込んできました。「JUNIOR DESIGNER AWARD 2015」という、建築からプロダクトまでの様々なデザイン専攻の大学生の卒業製作を総合した受賞者の展示でした。スポンサーは三菱ケミカル。面白い賞があるんですね。
まず目を引いたのは、冒頭の写真の茅葺きのベンチ。伝統的な屋根材の茅(かや)を家具に用いることで、五感や記憶を呼び覚ます力があることを「再発見」するプロジェクト。新鮮な感覚で面白いですね。
次に目を引いたのは、かつて日本に根付いていた「ぼろ布文化」を再生するプロジェクト。布が朽ち果てるまで無駄なく活用する手法として発展した刺し子や裂織から着想を得て、家庭で不要となった衣服を加工することで、大量生産・大量消費を脱する試みです。
他にも面白い展示もあったのですが、この二つにとても興味を引かれました。共通するのは、日本の伝統文化や美意識を現代に再生する試みということ。昨年までの賞のリストをみていると、こういった傾向の作品はなかったので、若い人の中でも新傾向の感覚ということになるのでしょうか。建築や住まいでも伝統建築のエコな面やデザインを見直すと面白いのではと思っているので、共感できました。
大賞は、中国人留学生の作品でしょうか?玉川上水沿いで作者が経験した一分間の「時間+空間」の要素を様々な要素に分解して収集し、分析してプレゼンテーションするという壮大な作品です。日本人は雨が「しとしと」降ると情緒的であいまいな表現を使いますが、中国語に翻訳すると「しとしと」→「千雨細降」のような分析的で詳細な言い回しになるそうなので、感覚の違いが上手く作品につながっている気がしました。日本人にはない新鮮な感覚とスケールや緻密さが、「圧倒的な質と量を誇るノーテーション作品」として評価されたようです。実際に中国の伝統建築を見ても思いますが、圧倒的なスケール感で、世界の伝統文化の中でも圧倒的に質の高いものが多いので、いずれ中国から世界的スケールのデザイナーや建築家、アーティストがたくさん出てくるのが楽しみです。
最近は学生さんの作品を見ることも少ないので、展示を見るのは興味深く刺激になりますね。自分も頑張らねばと思い、会場を後にしました。
Write a Reply or Comment