新保の家 完成レポート
新保の家は大人二人で暮らす小さな家です。ひとりが還暦を迎えるなかで、今まで住んでいた家を建て替えを決断されました。敷地は、昭和の建て売り住宅にありがちな四方を隣家に囲まれた狭小地。普通に建てると、窓の外には隣の家が近くに見える暗くてせまい家になりがちです。そこで、今回は住まいの中心に階段室を利用した明るい吹き抜けを設け、各部屋から吹き抜け側に窓を設けることで、内側に開いて開放的な明るい住まいを実現しました。
引き戸を開けて玄関に入ると、自転車が何台も置けそうな大きなタイルの土間があり、すぐ前に住まいの中心の明るい吹き抜け階段が見えます。その向こうには男性の寝室。まずは、階段を上って2階に行ってみましょう。
階段は幅も広くとてもゆるやかな上りやすいものとしました。段幅30㎝×段差15㎝にすると、すすっととても軽やかに上れます。還暦を迎えたこれからの暮らしに配慮しました。そして2階に上って右に曲がるとリビングです。
リビングは、勾配天井で広がりのあるシンプルなスペース。住まいの中心の吹き抜け階段に向けて大きな窓があるので、狭小地に建つ住まいとは思えない開放感があります。右手の窓からはキッチンスペースが見えます。
建て主の希望により、キッチンはリビングとは仕切られた独立したスペースとしました。調理のにおいがリビングに広がるのが嫌だったとのこと。そういった個別の希望にきちんと対応できるのが、設計事務所に依頼するメリットだったりもします。
リビングから吹き抜けの渡り廊下を渡ると、女性の寝室。手すりは木を使ったやさしいものに。戦後の大建築家「前川國男」の自邸の手すりを参考に、木造ならではのデザインとしました。
2階の寝室は、建て主の希望で、ベンガラ色の珪藻土クロス。勾配天井の開放的でシックなお部屋です。吹き抜け階段に面した大きな窓を通してリビングや外の景色までが見通せ、四方を囲まれた狭小地とは思えない空間の奥行きが感じられます。
リビングから階段の向かいに洗面・浴室の水回りスペースを配置。床はこげ茶色のコルクタイルとし、シックで印象的なスペースとしました。
1階には四畳半の大きなウォークインクローゼットを設け、収納量も十分です。
1階奥には男性の寝室。ものの少ないシンプルな暮らしを好まれていたので、無垢材のフローリングに明かり障子を設け、天井も梁を表しのシンプルな空間としました。お寺の僧坊のような印象で、住まい手のライフスタイルにあうスペースになったのではないかと思います。縁側も希望により縁なし畳の床とし、くつろげる日だまりスペースとなりました。
外観は、四方を隣家に囲まれている狭小地なので撮影できません。玄関周りに漆喰と無垢の木を用いながらその他は金属板葺きとし、コストとのバランスを取りました。南側の住まいがアパートに建て変わる際に一時的に道路から見えたそうで、印象的な外観だったとのこと。今はまたアパートの影になってしまったので、次の写真からご想像ください。
大人ふたりの住まいで床面積30坪弱と小ぶりなこともあり、無垢材をたくさん使った住まいを1000万円台後半(設計料を含む)で実現しました。設計事務所の住まいが手に届かないものではなく、住まいへの想いがあれば気軽に相談できるいい例となりました。
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