新しくなった京都国立博物館/平成知新館
京都を訪れたので、久しぶりに京都国立博物館に行ってきました。今回のお目当ては、新しくなった平成知新館(設計:谷口吉生)。20年ほど前に設計コンペがあり、20世紀中にエントランスゲート周りだけが整備されたのですが、15年ほど過ぎて、ようやく本館が完成しました。日本では珍しく息の長い工事ですね。
まずは、エントランスゲートでチケットを購入して入館します。モダニズム建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナパビリオンへのオマージュのようなデザイン。入り口脇のカフェとミュージアムショップも同じデザインです。
シンプルでモダンな外観で、大きな庇があるのが特徴です。同じ設計者の東京国立博物館法隆寺宝物館にも通ずるデザイン。伝統建築と同じ水平の要素が多いのと、設計者の表現が抑えられているので、不思議と京都の景観にマッチします。
入り口を入ると、少し脇に大きなエントランスギャラリー。展示を見る前後にゆっくり休憩できます。
エントランス正面には、吹き抜けのある気持ちのよいエントランスホール。展覧会の図録などのショップもあります。まずはエレベーターで3階へ。上から順番に見ながら下りてきます。
展示は、古代から近代まで多岐にわたります。遺跡からの出土品から、仏像、お経、絵巻物、工芸品、陶磁器、刀剣、屏風やふすま絵、装束などなど。新しいガラスケースに入って印象的にライトアップされているので、以前より集中して見られるようになりました。
建物も新しくなって、展示も現代的になったからか、以前より若い人や外国人など来館者が増えているようです。20年前は、欧米のモダンな文化に皆があこがれて、日本の伝統文化に興味がある人は少なかったのですが、最近は若い人も伝統文化に興味があったり、外国からも日本の文化が注目されているので、追い風が吹いているんですね。
見所はいろいろあるのですが、藤原道長が埋納した経筒など平安時代の遺物は華麗な王朝文化が感じられて見応えがあります。もう一つは唐物の中国や韓国から伝わった陶磁器です。当時は中国が文明国で日本は文化的にはフォロワーだった訳ですが、当時の先進的な大陸の文化の息吹が感じられます。
ちょうど開催中の企画展「皇室ゆかりの名宝」(2/21まで)に出展中のふすま絵ですごいものがありました。霊雲院の障壁画―元信芸術の粋―の展示室にあった狩野元信のふすま絵です。元信は有名な安土桃山時代を代表する狩野永徳の祖父に当たり、狩野派の二代目として基盤を築いた人物です。以前に見たふすま絵も印象深く、とても優れた絵師なのは知っていましたが、鶴や風景が今にも動き出しそうなくらい生き生きとしており、本当に驚きました。
展示の途中には、リファレンスルームでゆっくり調べ物をすることもできます。展示をしていない収蔵品も見られるのでしょうね。
3階から順番に展示を見て終わると、再びエントランスホールに出てきます。気に入った作品の絵はがきや図録を売っています。
今回は間違えて1階を先に見てしまったので、2階から階段で下りました。エントランスホールも空間が立体につながって印象的ですが、展示室内にも吹き抜けがあって、3階の展示室から1階の展示室まで緩やかにつながっています。同じ谷口吉生設計のニューヨーク近代美術館(MOMA)の増築部分も展示室内が立体的ですが、同じ方式のようです。展示室内が立体的なのは、MOMAと同じ谷口さん設計の丸亀のMIMOCA以外では、世界でもあまり見たことがないですね。
隣接する旧本館は、方広寺回廊の発掘調査中でした。
発掘調査が終わったら、たぶん、免震構造で耐震補強を行うのでしょうね。完成が楽しみです。
新しくミュージアムショップもできました。京都らしいものも置いてあり、なかなか楽しそうです。
建物や展示計画も新しくなって、気持ちよく半日過ごせるので、京都を訪れた際にはオススメです。レストランやカフェもモダンですごく上質なので、お寺巡りに疲れたら、お昼や休憩も兼ねて訪れてもいいかもしれません。
<京都国立博物館の公式ホームページはこちら>http://www.kyohaku.go.jp/jp/index.html
Write a Reply or Comment