木造の新しい可能性CLT(直交集成板)
いま専門家のあいだで注目されている新しい木造の技術としてCLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)があります。文字通り、1.5㎝程度の厚さの木の板を直角にクロスして貼り合わせて造った集成パネルになります。木は強度に方向性があり、繊維方向に引っ張ると強い強度を発揮しますが、繊維方向と直角に力を加えると簡単に破断します。そこで、直角に木の板を貼り合わせ、どちらの方向にも強い集成パネルとしたものがCLTパネルです。
小さな木の板を貼り合わせて集成パネルとすることで、セメント板のような大きな板が簡単につくれます。そこで、大きなパネルを並べて壁や床とし、簡単に木造建築が造れるというわけです。今までの木造建築は柱や梁などの線材で軸組構造をつくり、そのあいだを合板やボードで埋める方法でしたが、CLTを用いると全体が面の壁や床となる強固な構造が実現できます。
鉄筋コンクリートでも最近よく使われる柱と梁の線材による構造より昔の団地でよく用いられた壁構造がずっと強いように、CLTを用いた構造はとても強く、先進的に利用されているヨーロッパ諸国では、木造の中層マンションが実現されています。
いま日本の山には戦後に植林した杉や桧が大量に育っており、利用されるのを待っています。ところが、いままで木が使われていた木造住宅やビルの造作材などに合板や新建材が用いられ、国産材の使い道が少なくなって困っている状況があります。そこで、CLTという新しい技術を導入することで、木をたくさん使っていこうというわけです。
これから構造強度を決めないと構造計算できないのですぐには実際の構造に使えないとか、CLTの設計に慣れている構造設計者が少ない、まだ量産体制が整っていないので価格が高いなどの諸問題はありますが、どの技術も最初はそうなので、これから急速に解決されていくと思います。岡山の真庭地区がCLTパネルの生産では先進地域なので、地元岡山でも使っていきたいところです。
木の大きな板で非常に重いので、個人住宅に使われるのかどうかは、まだよく分からないところもありますが、一番上の写真の模型のように、壁と床が組終わるまで1日しかかからないので、職人不足の時代の省力化工法として、10年後くらいに一気に広まる可能性を感じました。
岡山が中心のひとつとなって推進している技術なので、しっかりフォローしていきたいと思います。
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